法王とアルカナ
双子の兄弟がそれぞれ営む店で、ある事件が起こった。
弟は、旅人の疲れを癒やす宿を経営している。ある日、そこに宿泊していた男性が急な腹痛を起こした。
その男性が運ばれたのが、兄が営む診療所。兄は迅速な対応で男性を治療し、回復へと向かわせた。
しかし、そこで問題が発生した。男性の腹痛の原因が、その日に男性が食べた夕食にあると医者の兄が断言したのだ。
幼い頃からこの兄妹は仲が悪い。弟は苦しむ男性を見て背に腹はかえられぬと思い、宿から最も近い兄の診療所へと運んだのだが、それが仇となった形だ。
弟曰く「うちは食事を看板として経営してるんだ。そんなことは有り得ない。うちで出している食事は全て毒味をしている。原因は他にあるはずだ」という。
しかし、実際に男性は倒れた。その原因を突き止めるため、おばあちゃんの付き添いで診療所を訪れていたアルカナに医者の兄が言った。
「アルカナちゃん。弟が経営している宿を調べてくれないか。あいつは嘘をついている。何かを隠しているはずだ」
アルカナは快くそのお願いを受け入れ、いつものように瞑想に入った。
しばらくすると、「あったよ」と声をあげ、続けてアルカナは言った。
「弟さんの宿にいる女のコックさんが泣いているわ。彼女は弟さんの奥様ね」
それを聞いた医者の兄は、悪戯に微笑んだ。
どうやら今回の一件は彼女が起こしたものだった。
倒れた男性というのは彼女の元恋人。暴力を振るい執拗に相手を干渉するような男であり、彼女が別れを切り出した後も、その後を追って捜していたのだという。
彼女は遠く離れたこの町にやってきて弟と出会った。それからしばらく自慢の料理の腕を宿で振る舞っていたところに、男がやってきた。
そこで彼女は自慢の料理の中に、男が苦手な食材をこっそり含ませ食べさせたのだった。
しかし、この件には裏がある。それを知り得たのがアルカナだった。
瞑想した際に、アルカナはもう一人の人物を捜していた。それは、弟の奥様の元恋人。つまり倒れて兄の診療所に運ばれた男だ。
男は、倒れて数時間しか経っていないのにも関わらず、とても健康そうな様子で札束を眺めていたのだ。
それを見つけたアルカナは、おばあちゃんと一緒に弟の宿に向かい、目を赤く腫らしたコックさんに話をした。
「コックさん。あなたの料理は最高よ。だって倒れた男の人、今ではすっかり元気になってるのよ。あれはお兄さんの腕じゃなくて、コックさんの料理のおかげだと思うわ。
それと変に訴えたりしちゃダメよ。この件はこのまま胸の中に仕舞っておくの。そうじゃないとお兄さんの思惑通りになっちゃう。復讐なんてもっとダメ。嫌いな相手には無関心でいる方が、損はしないわ。だけどもし、また何かあったらあたしも力になるわよ」
その後におばあちゃんが口添えする形でコックさんに言った。
「近いうちに男は法に裁かれるでしょう。コックさんはいつものように、食材を捌いてくれればいいのよ」
それからアルカナとおばあちゃんは、二人そろって宿の食事を堪能した。
弟は、旅人の疲れを癒やす宿を経営している。ある日、そこに宿泊していた男性が急な腹痛を起こした。
その男性が運ばれたのが、兄が営む診療所。兄は迅速な対応で男性を治療し、回復へと向かわせた。
しかし、そこで問題が発生した。男性の腹痛の原因が、その日に男性が食べた夕食にあると医者の兄が断言したのだ。
幼い頃からこの兄妹は仲が悪い。弟は苦しむ男性を見て背に腹はかえられぬと思い、宿から最も近い兄の診療所へと運んだのだが、それが仇となった形だ。
弟曰く「うちは食事を看板として経営してるんだ。そんなことは有り得ない。うちで出している食事は全て毒味をしている。原因は他にあるはずだ」という。
しかし、実際に男性は倒れた。その原因を突き止めるため、おばあちゃんの付き添いで診療所を訪れていたアルカナに医者の兄が言った。
「アルカナちゃん。弟が経営している宿を調べてくれないか。あいつは嘘をついている。何かを隠しているはずだ」
アルカナは快くそのお願いを受け入れ、いつものように瞑想に入った。
しばらくすると、「あったよ」と声をあげ、続けてアルカナは言った。
「弟さんの宿にいる女のコックさんが泣いているわ。彼女は弟さんの奥様ね」
それを聞いた医者の兄は、悪戯に微笑んだ。
どうやら今回の一件は彼女が起こしたものだった。
倒れた男性というのは彼女の元恋人。暴力を振るい執拗に相手を干渉するような男であり、彼女が別れを切り出した後も、その後を追って捜していたのだという。
彼女は遠く離れたこの町にやってきて弟と出会った。それからしばらく自慢の料理の腕を宿で振る舞っていたところに、男がやってきた。
そこで彼女は自慢の料理の中に、男が苦手な食材をこっそり含ませ食べさせたのだった。
しかし、この件には裏がある。それを知り得たのがアルカナだった。
瞑想した際に、アルカナはもう一人の人物を捜していた。それは、弟の奥様の元恋人。つまり倒れて兄の診療所に運ばれた男だ。
男は、倒れて数時間しか経っていないのにも関わらず、とても健康そうな様子で札束を眺めていたのだ。
それを見つけたアルカナは、おばあちゃんと一緒に弟の宿に向かい、目を赤く腫らしたコックさんに話をした。
「コックさん。あなたの料理は最高よ。だって倒れた男の人、今ではすっかり元気になってるのよ。あれはお兄さんの腕じゃなくて、コックさんの料理のおかげだと思うわ。
それと変に訴えたりしちゃダメよ。この件はこのまま胸の中に仕舞っておくの。そうじゃないとお兄さんの思惑通りになっちゃう。復讐なんてもっとダメ。嫌いな相手には無関心でいる方が、損はしないわ。だけどもし、また何かあったらあたしも力になるわよ」
その後におばあちゃんが口添えする形でコックさんに言った。
「近いうちに男は法に裁かれるでしょう。コックさんはいつものように、食材を捌いてくれればいいのよ」
それからアルカナとおばあちゃんは、二人そろって宿の食事を堪能した。
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